「さよならだけが、人生だ。」
なんか凡庸だった、というのが素直な感想だ。
今までの作品にあったような切迫感のようなものが抜けたとも言えるかもしれない。
私が初めてクラックラックスのライブをみたのは、1stEP『CRCK/LCKS』を出す直前の2016年1月だが、その時に感じたのは「混乱、混沌」だった。とにかく曲の中の展開が多い。まるで子どもがいきなり走ったり、泣き出したりするのをみているような感覚だった。双極性障害や(私の抱える)発達障害を持つ人の特性にも近い。考える間もなく音楽に踊らされる感覚があった。私のための音楽だ、と思った。私に向かって発されてるように感じていた。
『Temporary(vol.1)』は、そう思えなかった。アルバムを一通り聴いて、なんの強い感情も引き起こされなかった。ああそうなんだ、私ではない、誰かのための音楽なんだと思った。
何も悪いことではない。
きっとこのアルバムは、誰かの悲しみを掬い、誰かの寂しさに寄り添って、誰かの喜びと共にあるのだろう。かつての私にとってそうだったように。
「はなにあらしのたとえもあるさ、
さよならだけが、人生だ。」
言いたいことがたくさんあるような気がしていたけど、言いたいことなんて全然なかったことだけが、私は少し寂しい。
私がついていけなくなるくらい、CMや主題歌に起用されて、あんな音楽はセルアウトだなんて文句を言ってバンドを嫌いになったりするのかななんて思っていたのに、こんなに穏やかな気持ちで心が離れるなんて、思ってもみなかった。現実は、想像より冷たいものなのね。
それでは、健闘を祈っています。少し遠くの地から、愛を込めて。