あまい季節
冬のいちばん寒い時に、その季節はやってくる。
私は六本木のミッドタウンでチョコレートを選んでいた。
サダハルアオキの店内は、贈り物を選ぶ女性で溢れていた。
人の熱気ではなく、贈り相手への気持ちが彼女たちからこぼれて店に充満している。
うっとりするほどあまくて素敵な季節だ。
私は、およそチョコとは思えないカラフルで洗練されたフォルムのそれを手に取っては置いて、また手に取ってを何回か繰り返したのち、決めた。
これにしよう。
「電車に乗りそびれたから待ち合わせに遅れる」と嘘をついていくらか時間を稼いでいた。
日比谷線に飛び乗り、彼の元へ。
バレンタインにサプライズがあるなんて気づきもしない彼の元へ、走る。
去年の話です。
授業で書いた文章をそのまま転載。