「此の手は其の疲れを癒す為だけに在るの」
朝日を浴びながら一人家路につくときには
消えたくなる。
もうとっくに高いところまで上った強い太陽の光と、
私とは反対方向に向かう今日という日を始める会社員の出勤の波に
体の表面がごわついて消えてしまいそうになる。
誰かと一緒にいたくてしょうがない。
明日という日を拒否したくて眠りたくない。
なんて、私をナンパしてきた人が言う。
私が体調悪くて駅で倒れたなんて言ったから、
「君の体調が心配だよ」
「俺が言うのもなんだけど自分の体を大事にしてね」
「変な男もいるんだからさぁ」
「一人でも案外さみしくないよ」
なんて私の体を撫でながら言うのである。
彼は数年前最愛の人と別れ、元妻を忘れるために女を抱いてきた人だ。
どの口が言う、と私は笑ってしまう。
自傷行為をしているのは私もあなたも一緒だ。
自分のことが好きで、愛する人に真摯に向き合うが故に
僕らはこうなってしまうのだろう。
こんなに年齢が違うのに同じように悩んで同じようなことして
そしてあの大衆の中から僕らが引き合わされたのを思って
あぁ~この世の中面白いなあと思う。
ふふふ。
いい出会いだ。
破滅的ではあるけど。
「お盆なのにお仕事なんだね、頑張ってね」と私は言う、私は言う。
精一杯の愛情、私の掌にはこれくらいしかないので。
とても好きな人が、好きな曲。
僕らはきっとみんなのことが好きで、
みんなのことを大事にしたくて、
でも不器用だからとてもできなくて、
少しずつ傷つけて死にたくなるのだろう。
その痛みを思い出してよ、忘れないで。
つまんない大人になんてならないで一緒に生きよう。
途中で死んでもいいよ、最期まで目を見開き耳を澄ませて生きよう。